ジュエリーの真髄 アルビオンアート 至高の名品コレクション / 山口遼 著

世界文化社から発刊された宝飾史研究科であられる山口遼氏の著書「ジュエリーの真髄 アルビオンアート 至高の名品コレクション」が届きました。じっくりと腰を据えて目を通す前にパラパラとページをめくると既視感ある作品がいくつかあり不思議に感じていると、序文やあとがきに家庭画報で連載したコレクションを基に構成されている旨の記載がありました。または2022年に国立科学博物館で開催された特別展「宝石 地球がうみだすキセキ」で実物を目の当たりにしているコレクションもありました。

さて、内容はというと4つの章で構成されており、各章のテーマに沿ったコレクションが美しい写真と様々な知見で語られた解説でページを彩っています。紹介されている一つ一つが珠玉の作品であり、道理と美しさを兼ね備えた素晴らしい造形物であることを感じ取ることができます。

いくつか心に響いたコレクションを紹介させてもらうと…
第1章の冒頭を飾る「歴史に残るエメラルドの最高傑作」のエメラルドネックレスはトーンの揃った大粒のエメラルドとダイヤモンドが交互に配され、さらにペアシェイプのエメラルドが下がる壮麗で端正な佇まいの傑作。この作品はロシアの女帝エカテリーナが第二代バッキンガムシャー伯爵へ贈ったもので1500年代後半にコロンビアのムゾー(MUZO)鉱山で採掘されたノンオイルのエメラルドがあしらわれているそうです。


続いて第2章の「アールヌーヴォーの潮流」からウジェーヌ・フイヤートル 作 “蝶の精のブローチ”。美しいカーブが織りなす優れたデザインのコレクションで大胆かつ印象的にプリカジュールを用いています。ムーンストーンの配し方も絶妙で全体的に爽やかで透明感のある神秘的な作品です。


そして第4章からはキーワード「粒金」で紹介されているカステラーニ 作のゴールドネックレス。解説を読むと「現代では誰も作れないエトルリアの技術」と書かれており作品の半分ほどの範囲を占める粒金(りゅうきん)の施し方が全く解らないようです。確かに解説に書かれている理屈は理解できても加工の仕方は想像もつきません。その謎の技法が宿ったこの作品はミステリアスな魅力も纏い人々を魅了し続けるのでしょうか。


巻末にアルビオンアート代表の有川一三氏と著者である山口遼氏の対談が添えられているのですが、コレクターの定義について語っているところで、山口氏の「(有川さんは)集めても、ジュエリーのよさがわかる人にどんどん渡していく。そこが素晴らしいし、面白いですよね。」という発言に対し、有川氏は「私は、自分はジュエリーの文化を作るプロデューサーであると思っています。それに協力してくださる人たちがお客様です。売ってはいるんだけれど、皆様、私がやろうとしていることを理解してくれていて、自分たちも楽しみ、資産保全にもなっている。なんといいますか、私だけでなくお客様やご投資家も含めて、全体で協力してコレクションしているイメージです。」との回答に心を打たれました。

世界中から集められた至高のアルビリオンアートコレクションをまとめた、この一冊をぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

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