スミソニアン宝石コレクション 世界の宝石文化史図鑑 / ジェフリー・エドワード・ポスト 著 甲斐理恵子 訳

ホープ・ダイヤモンドにマリー・アントワネットのダイヤモンド・イヤリング、ナポレオンのネックレス、マクシミリアンのエメラルドなどスミソニアン国立自然史博物館国立宝石コレクション・ギャラリーに展示されている、歴史に名高いコレクションの数々を美しい写真や貴重な図版と共に詳細な情報源を基に丁寧な解説文で紹介しています。

序文の「宝石の物語」では、宝石の価値ついて核心を突く導入文からはじまり、なぜスミソニアン国立宝石コレクション・ギャラリーが世界で最も貴重な宝石展示のひとつとして名を馳せることになったのか…までを著者の豊富な知識とユーモアで綴られていきます。

続いて41点の「歴史に名高いコレクション」が紹介されます。この章のすべてのコレクションについての詳細なレポートが素晴らしく、鉱物学・宝石学の各視点とそれぞれのコレクションにまつわる歴史を織りまぜ、明晰な文章でまとめられています。冒頭に記したマリー・アントワネットのダイヤモンド・イヤリングなどの歴史的に貴重なコレクションの紹介は、それはそれで興味深いが個人的に心が揺れたのは割と近代のコレクションである「ポーチュギース・ダイヤモンド」。


恋多き端役女優ペギー・ホプキンズ(1893-1957年)が3人目の夫から贈られたパールのネックレスに加えて2万3000ドルを支払い手に入れた、現在ポーチュギース・ダイヤモンドと呼ばれている30万ドルのエメラルド・カットされた127カラットのダイヤモンドの物語は虚しくも人間味ある物語で綴られています。

続く「有名な宝石12選」「宝石コレクション」では、収蔵する種々様々な宝石群が紹介され豊かで厚みのあるギャラリーであることが心底伝わって来るページネーションとなっています。

そして1958年に寄贈され、スミソニアン国立宝石コレクションが世界屈指の所蔵品数を誇る所以とされる「ホープ・ダイヤモンド」の物語がいよいよ語られます。ギャラリーのアイコン的展示になった理由や呪われた?噂など、数多の登場人物やジュエラーが関わった歴史を交えて紹介されています。



著者のジェフリー・エドワード・ポスト氏の深く充実した文章はもちろん、甲斐理恵子氏の翻訳のおかげで飽きることなく一気に読める楽しく興味深い内容となっております。

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