ジュエリーを愛でる100のことば / 笠原可名 著

Amazonの段ボールを開いた時から、もうその世界が始まっている。小ぶりなハードカバーの装丁は美しく、読む前からすでにジュエリーとしての本といった佇まいである。

著者はクリスティーズ ジャパンで宝石部門を担当する笠原可名氏。ダイヤモンドやジェムストーンの基礎知識から、誕生石、歴史に名を刻むジュエリー、メゾンのアイコンデザインとそれを生み出したジュエラーたち、そして著者ならではのオークションの話まで100のことばが連なって奥へ奥へと誘う構成になっている。

ブシュロン、ヴァン クリーフ&アーペル、ティファニーといった歴史あるメゾンから、ルネ・ラリック、ピエール・ステルレ… ジュエリーの歴史を点ではなく線として捉え直す視座が心地よく、まるで博物館の展示に書かれたキャプションを読んでいるような感覚と評したレビューを見かけたが、言い得て妙だと思う。

宝石を商いとして扱う者と審美として愛でる者の視点は、しばしばすれ違う。だがこの本は両者の橋渡しをやさしく果たしている。地中の奥深くで億年もの昔に生まれた石が、数千年にわたって人に愛されてきた… そのスケールを改めて言葉で受け取ると、目の前にある石の重さが少し変わって感じられる。

ジュエリーを毎日扱う者としても、この本は鏡になる。知っているようで語れなかった言葉を、著者が代わりに磨いて差し出してくれる一冊だ。

Amazonから購入できます。
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